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2014 05/17 【第47回 50代ライダーのバイクライフについて思うこと】



もう初夏の陽気になりました。

地元のワインディングの入り口にある当店の前は、休日の朝ともなると多くのライダーが山に向かって駆け上がります。

朝早く、空気圧調整などで訪れるライダーの皆さんの笑顔がほほえましく、「気をつけて、行ってらっしゃい!」と、こちらも笑顔で送り出します。
しかし、最近では心配する気持ちのほうが強くなりました。

交通事故で死亡するライダーの多くが50代前後で、増加傾向にあることを耳にしたからです。

加えて、地元でも交通事故が多発し、ゴールデンウィーク中、同世代で亡くなられた方がおられます。


[ 50代ライダーの背景 ]


私は今年53になります。自分自身を振り返れば何故このようになってしまっているのかわかります。

若い頃は、今とは比べ物にならないほどのバイクブーム。

ロードレースが盛んで、参加する者も多い上に、全日本・世界GPなどのイベントには何万人もの観客がサーキットに訪れる、今では考えられない熱狂的ともいえる状況でした。

影響された一般のライダー達に合わせるように、各メーカーから発売されるレーサーレプリカ、私や友人たちも飛びついて購入し、地元のワインディングにはレーサー気取りのライダーで溢れていました。

このような背景で、私たちの世代はバイクに対して速さを求め、それを自在に操り他人より速く走れる者こそライダーである、という考えが刷り込まれたように思います。

今、同世代が再びバイクに乗り始め、各地のツーリングスポットで見かけるライダーの大部分を占めるようになりました。

失礼ながら、自分もそうなのであえて言いますが、見た目の頭髪や体型の具合(笑)と、走り始めれば同世代、特有のスタイルで、「ああ、年齢の近いひとだな」とわかるのです。
特にその走りには若い頃の癖が見受けられ、現代では不要なオーバーアクション、気分は相変わらずレーサーです。


[ 気付いているようで気付かない、バイクの高性能化と自分自身の老化 ]


普段の生活も落ち着いてきて、やっとバイクを楽しめる時がやってきました。

リターンライダー達はこぞって現代の大型バイクを手にします。
ものによっては200馬力近い、昔では考えられないスペックに心踊り、走り回ります。

フル電子制御でハイパワーが嘘のように乗りやすく調教され、おまけにABSやトラクションコントロールなど、万が一のライダーお助け装備も満載で、まるで数十年のブランクが無かったように走れるではないですか。

慣れてくると徐々に若かりし頃の自分に戻ってしまいます。

「あの頃と同じように走れる・・・!」、実は大きな錯覚です。

冷静に考えるとそんな事はありえないことに気付くのですが・・・・。

今のバイクは、全てにとんでもなく高性能です。タイヤなども昔の比ではありません。

そんな事は承知の上で購入していても、無意識に途方も無いハイスピードに身をおくことになります。しかし、高性能すぎて想像を遥かに超えたところに限界があることを実感できません。

そこで何かがあったとき、果たしてすばやく対応できるでしょうか。

当たり前ですが歳と共に体は老化しています。視力も落ちてすばやく動く事もできません。

普段の生活のちょっとしたことで、素直に老化を感じるくせに、ことバイクにおいては老化を忘れてしまう、よくよく考えれば、老化を忘れさせるほど今のバイクは高性能だと理解できるのです。
これはジャンルを問わずどのバイクにも言えることです。

そんな自分がアクシデントに見舞われたり、バイクの限界を超えた時、なすすべはなく、良くて大怪我、命を落として当たり前の状況に陥ります。





[ もっと心地よく楽しめるはず ]


冒頭お話したような事故のニュースとともにこれを書くきっかけになったのが、NWJCさんのキャンプツーリングでの自分自身の走りかたでした。

前を走るスクランブラーは全てにわたってコンディションの整えられた車両で、私のスクランブラーはリアサスのみをノーマルに拘った仕様ですが、若かりし頃のレーサーレプリカよりもはるかに優れた性能を発揮できる現代のモダンクラシックシリーズを進化させた仕様です。

私は、跳ねるリアタイヤにてこずりながら、上下動も横揺れもせずスムーズに走るスクランブラーになんとかついていこうと、車間を詰め、前の動きに合わせて遅れをとるまいと、無茶をする昔の悪い癖が知らず知らず出てしまい、走りに求める気持ちは若かりし頃のままでした。

この走り方、身に覚えのある人が大勢いると思います。

そうなんです、同世代の代表的な乗り方です。

リアタイヤが外側に大きく跳ねて危険を感じてハッと我にかえると、後の車両は、私に何かあったときに備えて大きく車間を取り様子を伺っていました。

「ああ、もっと余裕を持って心地よく走れたはず・・・、あれで何かあったら取り返しの付かない事になっていた・・・、自分自身だけでなく周囲も巻き込んでいたかも知れない・・・」

その後は反省しきりです。

無理無茶が無く、安全な車間で一人一人が自分のペースを守りながら、心地よいペースで走るNWJCの皆さんの中で、
一人だけ物騒な人間がいる感じで、気付いた時は顔から火が出るほど恥ずかしい思いをしたと同時に、身のほどを知らずで、周囲を考えないライダーであったことを気付かせてもらいました。

何事も無くて本当に良かった。

道中、すれ違うツーリングの集団にも、私のような走り方をするライダーが見受けられ、意外にその数が多かったのにも驚きました。重大事故が多いわけです。






[ 楽しいバイクライフを送るために ]


50代、バイクで命を落としたり、誰かを巻き添えに怪我をさせたりしたら・・・・。

家族や自分の周囲への影響を想像してみると恐ろしい事です。

しかし、バイク好きはやっぱりバイクが好き。

楽しく安全に走り続けるために同世代が心がける事は、一般道のライディングとは優劣を決めるものでは無いこと。
若い頃のように競い合うことが、楽しいバイクライフだとする考えは間違っていることに気付かねばなりません。

今回のNWJCのキャンプツーリングでこのことに気付いてよかったと思っています。
当店でもこれから頻繁にツーリングに出掛けていますし、これからも色々とツーリングを楽しむ計画があります。

実は毎回、ツーリングから帰宅してから考えさせられる出来事があり、どうすれば安全に楽しめるのか考えていたところだったのです。

今のところ、幸い事故無く、みんな無事に帰ってきています。しかし、危ない場面はいくつかありました。それは同世代が一緒に走ることによって引き起こされた危険かもしれません。
正直なところ、私が今までお話した事をしっかり自覚していれば避けられたものだと思っています。

バイクのライディングこそ、精神的に大人である事が要求されます。

今回感じたことをRBRツーリングに活かすとともに、バイク屋のはしくれとして、自分も含めて同世代の皆さんが不幸な事故を起こさないように伝えたいと思った次第です。

素晴らしいバイクライフを共に送りましょう。次の世代がわれわれを見ています。




次回に続きます。
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[ 50代のバイクライフについて思うこと PART2 ]




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