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2023 02/10【 50代のバイクライフを60代になって考える 】
「50代の僕がバイクを楽しむことを考える」を書いてから5年が経ち60代になりました。
若いころとは環境がずいぶん変わってスマホ、SNS、インターネットと良いも悪いもいろんな情報を
瞬時にして簡単に得ることができます。
ほっといてもニュースはスマホに表示され、昨年の2輪車死亡事故は50代が最も多かった(警視庁)
ことを知りました。
今に始まったことではなく「リターンライダー」という単語が出来て数年、50代ライダーが増えると
ともに不幸な事故も増え続けています。
[ 驚いた無責任な「オススメ」 ]
インターネットやSNSのバイクに関する情報の中で、
驚いているのは「50代で趣味のない方はバイクがオススメ」という言葉です。
若いころにバイクブームを経験しているので、もともとバイクを身近に感じているのも根拠のない情報
の説得力を生んでいます。
それに似たような、「50代に似合うバイクは?」とか「50代リターンライダーにお勧めバイク」な
どがたくさんあって、まるで50代はバイクに乗れ、と言わんばかりです。しかもおススメはビッグバ
イクばかり。
これを見た人たちは、「働き詰めでふと気づいたら50代。これといった趣味もないからバイクにでも
乗るか」となるのでしょうか。しかし、バイクを趣味とするために都合のよい情報だけ収集できるのも
情報社会の怖さではないでしょうか。
それは、バイクを売るまでのことだけで、肝心の売った後のことには全く触れられていません。
一番の購買層である50代に1台でも多く売りたい、という売り手側の気持ちのみがうかがえます。
考えすぎかもしれませんが、これらの情報は、販売が全てのメーカー系と深くかかわっているように思
えてなりません。
[ バイクは危険な乗り物 ]
ご存じのようにバイクは人間がバランスをとることで、走り、曲がり、止まる乗り物です。
停止する際も足を出して支えてやらなくてはなりません。
うまく乗りこなすためにはライダーのスキルアップと、バイクをいつも調子のよい状態を保つ、実際に
乗っていて実体験豊富なメカニックのメンテナンスが不可欠だと思うのです。
ですから、50代で趣味がなければバイクでも・・・というのはとても危険な発想であると思います。
昔乗ったことがあっても、10年20年とブランクがあれはほとんど初心者です。
いいかげんな情報でバイクを簡単に乗れると勘違いさせられた50代がビッグバイクに乗る・・・こん
なに危険なことがあるのだろうかと思うのです。
これに気付く方たちがいても、今のバイクは電子制御付きでなんとかなるし安全、といった情報も用意
されているので、危険であることがかき消されてしまいます。
電子制御は、まだまだ乗れると錯覚させ、何の兆候も無くあっさり限界まで達します。
限界を超えたときは、超高速の中なすすべなく、死んで当たり前で運が良くて重症、となってしまうの
が現実です。
日常生活では何をするのもスキルアップが必要だとわかっているのに、バイクに対してそう思わないの
がとても不思議です。
今思うと、学生の頃は幸いお金が無かった(笑)ので、50ccから始まり、順番に排気量を上げざるを
得ない状況でしたので勝手にスキルアップするようになっていましたし、当時通っていたバイク屋さん
にいきなり大きなバイクの話をしても、「もっと経験を積んでから少しずつ大きくしていきなさい」と
たしなめられたものでした。
売り手も、バイクは危険な乗り物であると認識があった、いい時代に育ったんだと思います。
現代は、昔ほど販売台数が見込めない中、バイクメーカーと、バイク屋というよりメーカー系バイク販
売所にとって、子供も手を離れて時間とお金がある50代は格好のターゲットとなり、あの手この手の
販売促進情報の沼に落とされているように見えます。
こんな背景で、特に50代のバイク乗りが急激に増え、同時に死亡事故が増え続けることに直結してい
るのだと感じています。
[ アクセサリーとしてのバイク ]
考え方もいろいろで、おススメのバイクの理由に、「良い歳なんだから、これぐらい乗ってないと」と
いうのもよく見かけます。また、憧れのブランドであり、スペックにも魅力があります。
自分を惹き立たせる、装飾品と同じ考え方があまりに多くて驚くのですが、
装飾品と違うのは、一歩間違うと命を落とすことがあることには誰も触れていません。
これには「カスタム」&「ドレスアップ」という話もついて回ります。
お客様自身で思われる以前に、友人やバイク屋、バイク系情報サイトに「これぐらいやっておかないと
・・・・・」という情報も山ほどあって、マフラー、バックステップ、ハンドル、等々、「カスタム」
は多岐に及び、最終的に付けられるものてんこ盛り状態のバイクが出来上がります。
またそれをわかっているかのようにパーツメーカーも多く存在します。
「とりあえず何でも付けとけ」、安全とは程遠い話です。
僕もカスタム屋をしていましたので、昔を思い出します。
当時の僕はSRをメインに片っ端から国内外のカスタムパーツを取り付けるという仕事です。
乗りやすいとかバイクの調子がどうとか、ということより、いかに多くのパーツを一台に取り付けるか
が重要でした。
それなりにお客様も喜んでくれていたので、自分の仕事に何の疑問も持ちませんでした。
自分もそうでしたが、出来上がってしまえばそのバイクに飽きて、バイクを降りるか、その時話題のバ
イクに乗り換えて、カスタムを繰り返します。
行くところと言えば、同じ人たちが集まる道の駅かコンビニの駐車場で、丸一日「バイク品評会」に興
じます。せいぜい走る距離は100kmといったところでしょうか。
それも趣味と言えば趣味なのでしょうが、バイクを長く楽しむこととはかけ離れたことをしていたなあ
と、思うのです。
このこと気付いたのは、ずいぶん歳を取とった後、カブ110NWJCコンプリートを楽しむようにな
ってからです。
[ 歳をとって必要なのは振り返ることです ]
こんなことを話してますが、僕自身、NWJCの高田さんと出会い、教えてもらって気付いた立場です
ので偉そうなことは言えませんが・・・。
16から途切れることなくバイクに乗り続け、憧れのビッグバイクも乗ってきて、今まで生きているの
は、50代のある時、カブ110NWJCコンプリートに出会って、自然にダウンサイジングができた
ことに尽きると思っています。
カブ110NWJCコンプリートに乗っていると、とても不思議な感覚ですが、
50代になって体のあちこちの痛みが出ることもあり、老化が進んでいてビッグバイクに乗ることが苦
痛で億劫になったことも素直に認めることができて、それからもっとバイクに乗ることが楽しくなった
のです。
ビッグバイクは、トライアンフ空冷スクランブラーNWJC2014仕様のアナログ感が最高傑作でし
て操る楽しさと乗り続ける楽しさがあり、僕のお気に入りで楽しんで乗り続けています。
当初僕のバイクライフは、「今よりさらに大きく速く」を目指して進んできましたが、
50代は心身ともにビッグバイクに乗る限界に到達する歳だ、と自分のことが理解でき、バイクに対し
てダウンサイジングという言わば振り返ることができました。
高田さんが言うところの「緩やかな放物線を描くバイクライフ」ということだと実感しています。
[ 僕の幸せなダウンサイジング生活 ]
ご存じのように僕はカブ110NWJCコンプリートType2とCB250R−TMに最高のアナロ
グ感のトライアンフ空冷スクランブラーNWJC2014仕様の3台で幸せなバイクライフを送ってい
ます。
僕の楽しみ方にバッチリ合って新型にも後れを取る事のないバージョンUPと長く乗り続けるためのメ
ンテナンスも楽しいカブ110NWJCコンプリートType2とCB250R−TMの2台は、軽く
取り廻しも楽で、フル積載であってもバイクを操る楽しさを存分に味わえるバイクです。
頻繁に長距離ツーリングやキャンプツーリングに出かけることができますし、そのうち時間を作って連
泊で気ままな旅に出かけるのが夢なんて思えるのはこの2台があってこそ。
[ 小さければよいということではありません。 ]
こんなバイクに出会えたのは、NWJCさん抜きでは考えられないことです。
バイク屋の僕ですらそうなんですから、お客様方が幸せなバイクライフを送るためには、何度も言いま
すが、自らバイクを楽しむ実体験豊富で、培ったノウハウをお客様方にフィードバックができるバイク
屋と付き合うことが最も大切なことだと思っています。
そうでない場合、今までと同じ繰り返しで、小さくしたものの、ネットでよく見かけるアフターマーケ
ットのパーツてんこ盛りになり、つけるだけつけて飽きて乗らなくなる、なんてことになります。
僕の近所にもこれでもかとパーツを付けた放置状態のCT125を見かけます。
大切なことは乗り始めてからのことです。
どうかいい加減な情報に振り回されることなく、安全で楽しい50、60代のバイクライフを送ってくだ
さい。
[ 最近気になっているバイクの「品質」 ]
僕は本と兄の影響もあって子供のころからホンダ好きで、好きが高じて乗ったバイクもホンダばかりで
最初の就職先はホンダの販売店でした。
本田宗一郎さんの時代で、それはもう自慢のホンダで大好きでした。中でもホンダにはJIS規格より
はるかに厳しい「ホンダエンジニアリングスダンダート」というのがあり、国内に数ある2,4輪メー
カーの中でもトップクラスだと教えられていました。
確かに当時はボルト1本でも他社と比べると高品質でしたし、部品一つ一つも機械好きなら「すごいな
ー」と感心するものばかりで、やっぱりホンダが一番、と自信をもっていました。
しかし今はどうでしょうか。どうしたことかISOに準じるようになってからでしょうか、何これ?と
思うバイクが急激に増えました。グローバルスタンダードという言葉を耳にするようになってからコス
トダウンの限界に挑戦しているかのような品質感、斜めに入ってねじ山を潰しているボルトだらけ。
出来の悪さは、趣味性の高い大型バイクにまで浸透していて、何十年と続いてきたよくできたバイクは
どんどん姿を消していて、代わりに出てくる新型車は「やっぱりこうなるのか」とガッカリし続ける毎
日です。時代の流れなのでしかた無いことなのでしょうが、なんともやりきれない気分です。
幸いその良い時代のMade in JapanのHONDAのバイクが現存しているうちは、好きな
「ホンダ」を大切にしていこうと思っています。
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