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2021 12/11【 VTR NWJCツーリングマスター試乗記 】
(以下文中VTR NWJCツーリングマスターはVTR NWJCーTMとします)
日ごとに寒くなり、寒さに合わせてバイクに乗るライダーが少なくなっていますが、昔に比べて廉価
で高機能な防寒装備ができて冬も楽しめるようになってきたのに何故でしょうか。
セロー250NWJCーTMの試乗を兼ねてNWJC恒例の木曽路ツーリングに割り込み参加をさせ
ていただいて、ご一緒したSOさんとの何気ない会話から意外な話を聞くことになりました。
SOさんはSL230TMとVTR NWJCツーリングマスターの2台所有されています。
VTR NWJCーTMはNWJCの高田さんが北海道ツーリングも楽しみ以前から継続的に深化さ
せてきた過程で試乗させていただいた事があります。
SOさんはSTDのVTRがNWJCーTMへ深化する過程をすべて楽しまれてきたのです。
VTRのことをもうちょっと詳しく聞いてみると、SOさんのVTR NWJCーTMは、ハンドル
ポジション等細かなところはSOさんにバッチリ合わせて仕上げてあり、無理をしなければ積載状態
で多少のダートなら抜けられる走破性もあるという特別なVTRのようです。
素晴らしいではないですか。それが悩みとはなんだろう。
SOさんは、たっぷり荷物をもって自分のペースでのんびりバイク旅を楽しみたい方で、以前に高田
さんのカブ110NWJCコンプリートを借りてキャンプツーリングを楽しまれたことがあり、それ
以来気になっていたカブ110NWJCコンプリートを増車されるそうです。
3台になると置き場の問題もあり、自分の楽しみ方に合ったSL230TMとカブ110NWJCコ
ンプリートに乗ってばかりになりそうで、VTR NWJCーTMに乗る機会が殆ど無くなるのでは
・・・。
乗らなくなって調子が悪くなるくらいなら、どなたかVTRでバイク旅などを楽しみたい方に乗り継
いでいただければ・・・・とも思うし、でもVTR NWJCーTMは素晴らしい乗り味は捨てがた
くどうしようか悩んでおられるとのこと。
失礼ながら、なんと贅沢な悩みなのだろう・・・・・確かにそこまで仕上がった特別なVTRならな
かなか手放せないと思いますよね。気持ちはわかります。
VTR NWJCーTMのSOさんスペシャルはどんな乗り味なのか俄然興味がわいて、高田さんよ
り試乗をお願いしていただき、後日NWJCさんへVTR NWJCーTMをお借りに行きました。
[ VTR NWJCーTM + SOさんスペシャルに乗る ]
「毎回強引が過ぎるな」と反省しつつ軽トラで持ち帰ったSOさんのVTR NWJCーTM。
跨るとハンドルはSOさんの好みに合わせていると言っておられましたが、少し厚みを増した程よい
硬さのNWJCコンフォートシートにより、前傾することなく手のひらでそっとグリップを押さえる
ことのできる、力を入れない実に自然なポジションになります。
サスペンションはしっかりしていて、体重を預けると少し沈んで安定しています。
新車時のぐにゃぐにゃで深く沈み込むVTRを知っているので、かなりの差を感じるところです。
軽トラからの積み下ろしだけでも足回りの違いが解るほどでしたので、跨って「なるほど」と納得で
す。この足回りもNWJCツーリングマスターシリーズに共通するものを感じます。
しかし真っ赤ってのが良いですね。還暦の僕にピッタリ・・・・・すいません余計な話でした。
前回のセロー250NWJCーTMの試乗で木曽を走った荷物をそのまま載せかえ、やはりNWJC
ーTMらしく、NWJCオリジナルVTR用に造られたキャリアにあっと言う間に良い位置に固定。
リアサスペンションはほとんど沈むことなくサイドスタンドで安定しています。
今回は地元のお気に入りのルートを一回りすることにしました。
セルを回すとすぐ、一発目元気よく着火し「パンッ」という感じで始動したエンジン、実はNWJC
さんのメンテナンスを受けたバイクすべてに感じていることで、僕のスクランブラーにも共通する部
分なので、思わずニヤニヤ。
メカニカルノイズが無く、アクセルをあおってみるとピックアップの速さとパルス感のあるVツインら
しいサウンドにはちょっとビックリ。でもマフラー含め完全にノーマルです。
走り出すと力強い低速トルクによりスピードの乗りがすごく良い。過去の経験から低回転は全く力不足
感で、少しアクセルを開け気味にしないと加速しない感じだったのですが・・。
5000回転も回せば十分にかなりのペースで走ることができるうえに、まだ許容回転数の半分以下で
すから、その気になれば全域を使って、相当な高レベルのスポーツライディングを楽しむことができる
のです。もちろん、流れに乗ってノンビリ走ることも楽しめます。
STDのVTRでは回しても、回しても、盛り上がらずとらえどころがないパワー感とは無縁に思って
いたのですが、NWJCーTMのエンジンは素晴らしく滑らかに回り本当に気持ちよく、回せばパワー
が盛り上がり、全く逆の感覚でこれが本当のVTRの姿だったのかと思いました。
ダンピングの効いたサスペンションは本来のストロークの倍以上良く動いている感じで、車体の姿勢は
あらゆる路面で安定しており、安心してブレーキングと加速を繰りかえすことができます。
コーナリングはいつでもニュートラルで、スピードに関わらず後ろの重い荷物の影響は全く受けず、ワ
インディングを楽しんでいる最中は荷物を忘れてライディングに集中ことができるのです。
それはすべてのNWJC―TMの特筆すべき特徴です。
コンフォートシートは最高で、STDのシートは足つき性を優先するあまり膝の曲がりが窮屈なんです
が、下半身の収まり具合もタンクとのつながりも良く、移動させたりグリップさせたり自由自在。
また、435kmの間お尻が痛くなることがありませんでした。
「これは上質だなー、めちゃめちゃ気持ちいい!!」
上質なスポーツバイクのお手本のようなVTRの仕上がり具合に唯々驚くばかり。
またVTR専用のスクリーンの効果は抜群で、ポジションにもぴったり合っていて、風はもちろん途中
雨に降られましたがヘルメットのシールドに直撃することもなくとても快適。
特にこれからの季節はこれ無しでは走る気になれないと、SOさんもSL230TMのスクリーンを絶
賛されていたNWJC−TM専用のスクリーンは逸品です。
ブロックパターンのタイヤは仕上げられた足回りのおかげで舗装路でもスポーツライディングを楽しめ
るほど十分なグリップがあり、SOさんが楽しむ「バイク旅」において様々な路面に遭遇することを考
えればベストな選択だと、高田さんからの提案に大賛成です。
ドライ、ウェット、ハードウェット、ダート、と雪を除いてあらゆる路面を試しましたが、全く不安な
くむしろ楽しんで走れてしまうところは、初心者というよりは長年乗り続けてきたベテランにこそお勧
めしたいNWJC−TMです。
それにダートでの素直なハンドリングとぬかるんでいても足をすくわれない安心感はこのVTR NW
JCーTMのオールマイティーさを際立たせています。
「気に入ってしまった・・・・・これは大変なバイクに乗ってしまったぞ。SOさんが悩むのも無理な
いな〜」
しかしあのVTRがこうなるとは・・・・・・。
[ VTRについて ]
VTRと言えばこのエンジンの歴史はとても古いですよね。
僕らもお世話になり、1982年VT250FとしてヤマハRZなど2サイクル勢に対抗して4サイク
ルで挑むという高回転型Vツインとして登場したスポーツを前面に押し出したバイクでしたよね。
それから少し姿を変えながらエンジンはインジェクション化されたのを最後におよそ35年も生産され
た、ホンダの誇る名機であったと思うのです。
VTR NWJCーTMに乗ってみると、もともとVTRがこんなすごいポテンシャルを持っていると
誰も気づかなかったのは何故だろうかと不思議に思うのです。
それは、メーカーはなぜか初心者向けのエントリーモデルとして、極端に柔らかいサスペンションや足
つき性で乗りやすさを強調し、最後にはオトナMOTOというカラーリングだけを変更した意味不明な
バイクにして生産を終了してしまっていることも大いに影響していると思うのです。
目先の販売台数のために、それに関わる雑誌等媒体や販売主体のバイクショップもバイクに乗って楽し
むことがないからですか、VTRのもつポテンシャルに気付くことなく、よってたかって良いものを台
無しにしてしまったのです。これは他のバイクでもいえることです。
また、バイクを構成する部品一つ一つをちゃんと丁寧に作っている高品質はバイク全盛期に育った僕ら
にはうれしいところで、今のコストダウンの激しいバイクでは到底及ばないですね。
どのメーカーもこの年代以降、基本の部分のコストダウンが主流になり、電子制御など新機構にコスト
を掛けてバイク本来の良さを失いながらお茶を濁すようになっていくのです。
VTRに乗ることがメーカー出荷時のコンディションのままで終わっていたならこんなことに気付くこ
となく「そんなバイクもあったね」で終わっていたのですが、VTR NWJCーTMに乗ると、僕が
VTRを購入してNWJCーTMにできていたら、もうこれ以上はいらないとずっと乗り続けていただ
ろうとホントに思うのです。
これは初心者向けではなく、長年乗り続けてライディングの引き出しをたくさんもっているベテランに
こそ乗ってほしい一台に仕上がっているのです。
[ NWJCツーリングマスター ]
NWJCツーリングマスターシリーズは、速さより心地よさをコンセプトに、何かに特化することに無
い「あいまいさ」と、和洋折衷の「大らかさ」をテーマとして、高田さんが選りすぐって自らが自由気
ままにフィールドを拡げて楽しみ、乗りながらあれこれ考えながら仕上げてきたバイクたち。
それを見ていた人たちが、自分も同じように楽しみたいと、深化し続けるバイクを長年にわたり何万キ
ロも楽しんでいる人が多く集まり・・・・・僕もNWJC高田さんの恩恵にあずかった一人です。
高田さんがよく言われるのは、メーカー系販売店は工業製品としての完成品を売る事が最終目的だか
ら、メディアによる新型の工業製品に関する商品説明で、存在感やスペックが云々で所有欲をあおるこ
とだが、現実的にそのイメージ通りに楽しめるのか?言うまでもないだろう!!
VTRオトナMOTOもイメージ通りに楽しめないのが現実であり、よき時間を楽しむ価値ある道具と
しては未完成だから、バイク屋自らが楽しみ、実体験に基づいたメンテナンスやモディファイを提案で
きることが求められているのではないかと言われます。
SOさんも実はメーカー系販売店でVTRを購入して、ライディングスクールやツーリングに参加して
何かが違うと思い始めていたところ、NWJCさんがVTRを深化させていることを知り、違いは何か
とNWJCを訪ねたところ話だけでは解らないと、NWJCのVTRに試乗させて頂いたそうです。
その違いは驚きで何故こんなに違うのか、それがSOさんにとって本当の意味で良きバイクライフの始
まりとなったようです。
昨年のGWにはNWJC独自のトレッキングごっこを体験されて、メーカー系販売店のライディングス
クールとの違いを目の当たりにして、操ることは慣れる事ではなく主体性と感性が求められることで、
その後のツーリングから高田さんはじめ大ベテランのNさんたちより、いろいろなアドバイスによりス
キルアップを実感できるようになり、素敵なバイクライフが始まったようです。
メーカー系の雑誌やSNSの試乗記等は何キロ乗ったところで出荷時の工業製品としての評価であって、
それは販売台数を稼ぐためのイメージづくりでいい加減なものが殆どです。
メーカーやメーカー系の販売店は売るところまでが仕事でその後は知ったことではありません。
よく新車を買ってすぐ手放す話を聞きますが、この辺に原因があるのでしょうね。
「バイクは乗り始めてからがバイク屋の仕事。良き時間を過ごせる価値道具か、良き相棒に仕上げるこ
とが大切ではないか。」と高田さんはいつも言われます。
まさにその通りだと僕も気付かせてもらい、ライダーとしてバイクを楽しむことが出来るバイク屋とし
てそうありたいと思っています。
[ サスティナブル ]
これからの社会の流れに必要なこととされるワードの一つです。資源を大切にして持続可能な社会をつ
くる、ということで使われているそうです。
リユースは一つのものを調子悪い、壊れたからと言って簡単に捨てるのではなく、修理やメンテナンス
をして何度も何度も使い続けることですから、2つの言葉の目指す方向は同じと思います。
VTRのようにメンテナンスとモディファイで輝く車両をNWJCーTMとしてラインナップされてい
ます。これが社会の流れにも合致しているのが、バイクを楽しむバイク屋として嬉しいところです。
もう皆さんご存知の通り、僕はNWJCツーリングマスターシリーズが大変気に入っていて、大ファン
の一人です。
VTRにお乗りの方で、VTRをより楽しむ為のご質問ご相談等ございましたら、お気軽にご来店くだ
さい。
お待ちしております。
★NWJC高田さんがVTRーFで北海道を旅された記事を是非ご覧ください!★
↓文字をクリックです。
★バイク屋の備忘録 :「 VTRーFで行く北海道 その1 」
次回をお楽しみに。
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